コンサバトリー恋物語 全4回 ④緑と間

建築家・景観デザイナー 山田 朗

  3回にわたりコンサバトリーの歴史や機能についてお話してきました。最終回として今後日本におけるコンサバトリーの方向を考えたいと思っています。

戦後の住宅や生活の西洋化はそれまで日本の伝統的家屋が持っていた縁側や土間を排除してきました。インテリアとエクステリアと領域が二分化され半屋外のあいまいな部分が無くなり、自然を肌で感じる空間が少なくなってしまいました。日本人は四季の移り変わりを生活の節目としてきました。最近のガーデニングブームも今の西洋化されたライフスタイルの中で日本人の伝統的な感性とが合致した結果だと思います。

さて、英国では約150年前産行革命で鉄とガラスと蒸気機関の工業化でコンサバトリーなるガラスの空間をつくり、南方の植物を越冬させる技術を確立しました。これはヨーロッパの石造りの建築にとって半屋外的空間として住宅から商業施設まで広く普及しております。(写真1)

私は15年前に日本で初めて英国のコンサバトリーのアムデガ社代理店として紹介を始めたわけですが、当時はまだまだツーバイフォー住宅や輸入住宅が今よりも普及しておらず、デザイン機能の面で整合しない要素がありました。近年輸入住宅の普及に伴って日本におけるコンサバトリーの認識が高まってきたと思います。しかしながら土地にゆとりが取れない場合が多く、十分にその機能を発揮できません。余裕があれば第二リビングやペットや植物との癒しの場としても機能します。

最近、私が提唱している使い方は、縁側や土間的利用方法です。つまり玄関先に設置することによりちょっとした応接間であったり、植物の手入れの場、ペットとの触れ合いの場など省スペース多機能ができ、本来持っていた空間感覚とも合致し、日本人の宗教感に根ざしている「縁」と「間」にコンサバトリーが接近してくるのではないかと思っております。(写真2、3)