コンサバトリー恋物語 全4回 ③ガラス命

建築家・景観デザイナー 山田 朗

第一話ではコンサバトリーの起源、第二話ではその発展について述べてきました。さて今回はコンサバトリーのもっと重要な構成要素であるガラスについて話を進めましょう。

ガラスはご存知の通り数千年も前から存在し、メソポタミア・エジプト文明では装身具として多く使われてきました。紀元前一世紀頃には吹きガラスの技法により器としての機能が確立されると急速に発展していき、(ローマンガラス)その後、ベネチアンガラスへと受け継がれていきます。

(写真1) Making crown-glass1800(出典/THE GLASS HOUSE)

建築的な使われ方、つまり窓としては古代ローマ時代ポンペイの浴場の採光用として板状の小さなガラスが数ヶ所使われていたようです。中世はクラウン法という技法で板ガラスを造っていましたが、大きさには限界がありました。(写真1)その後、筒状にしたガラスを切って円筒法の技術によってクラウンガラスよりももっと大きな板ガラスが可能になり、前回お話ししたような鉄とガラスによる大規模建築が可能となったわけです。(写真2)

さて、コンサバトリーとガラスについて述べる上で重要なガラスの開発があります。それは、複層ガラス(ペアガラス)です。これは戦後まもなく英国ピルキントン社がフロート製法により表面が均一な板ガラスを開発したものと前後して、2枚のガラスを空気層を設けて一体化し、これを窓にしようする事により、熱の流出入を低く抑えることが可能となりました。一般的に住宅の窓をペアガラスに変えると約3割~5割くらいエネルギーの節約ができるといわれています。


(図1) 英国ビルキントン社
K-GLASS(低放射性ペアガラス)

さらに、高機能ガラスを組み合わせることにより、夏涼しく、冬暖かい、室内環境を作り出すことが可能となるわけです。(図1)北海道を除いて日本では夏の暑さが厳しいですから、コンサバトリーのガラスはペアガラスを使い、そのもっとも効果的な組み合わせとして屋根ガラス外側に熱線反射ガラスを設け、壁ガラス内側に低放射性ガラスを使うことにより、快適な室内環境コンサバトリーとなります。