2008年10月号 曖昧のテイスト (その4)
高齢化社会の本来のバリアフリーを考える

最近コンサバトリーを増設し高齢者のためのリフォームが増えている。英国のコンサバトリーは日本家屋の土間や縁側に似ている。半屋外の曖昧な中間領域と言えるが、明るい陽溜りとなってそれが高齢者にとっても居心地の良い空間となる。

例1)ご両親介護のために今まで別家屋での生活から同居のためのリフォーム、2階建の1階部分をご両親の生活スペースにし、今までリビングだった部分を寝室にし新たに共有リビングとしてコンサバトリーを増設

例2)ご子息は既に独立しお母様の逝去によって空いた部屋を老夫婦の生活充実のためにリフォーム、やはり生活の場を1階に置き、空いた2階の活用を考えるというもの、いずれもコンサバトリーを軸として展開

子育て時代は2階にそれぞれの寝室があり1階が団欒スペースであったが、高齢化した夫婦にとっては1階で全て生活できるようにリフォームし1階と2階を分離する事で、生活機能にバリアを設けて整理する、つまり「生活スタイルのリフォーム」ということも、高齢者の大きなニーズなのだ。そしてもちろん、その生活は充実感と幸福感を与えるものでなければならない。緑に囲まれたコンサバトリーは高齢者にとって「家の中の小さな別荘」同じフロアでも全く違う空間によって衰えつつある五感を刺激する空間と勧めている。

個別的なハード面のバリアフリーより社会の質を変えるバリアフリーへ 高齢者のためのリフォームを通して見えてくる事がある。家族が少なくなった2階は改造して学生や若者が住める貸部屋やルームシェアなどとしたら、万が一の災害時に手助けが出来るという事も可能かもしれない。木造の耐震化も必要な事ではあるが成人の約4割が65歳以上という日本社会のまちづくりを考えると、段差の解消などの個別な対応ではなく町全体として社会的バリアーを無くすような方策が望まれる。
今の建築基準法ではアパートや集合住宅になると途端に厳しくなる、当然防災関係の強化は必要であろうが、もっと簡単なかたちで改造ができる方策も必要であろう。コンサバトリーの様な半屋外的スペースは英国のように建ぺい容積の枠にとらわれず一定規模まで緩和するなど日本の狭小な敷地条件のハンデをカバーできるような施策を望みたい。 世代間の交流やコミュニケーションが出来れば何もハードをバリアフリーにしなくても、お互いに助け合える・・・分からなければ、人に気軽に聞けること、手すりがなくて困っている老人がいれば、手助けすれば済むことだ。それが逆に、バリアがなくて手すりがあるかるから、手助けなんてしなくて良いだろう、という風に日本人の優しさは変質してしまった。「バリアフリー」はまるで、アリバイ作り、責任逃れのように思えてならないのである。町全体のルールづくりをしながら自己責任において改造してゆける「曖昧さ」を許容出来るような文化を再構築したいと思っている。

「家の中の小さな別荘」五感を刺激するコンサバトリー